ユニコーン(一角獣)についての伝説や物語もいっぱいあります。
アニメやゲーム、漫画でも「悪」と「正義」といろんな種類がありますよね。
今回は、そんなユニコーンについて書いていきたいと思います。
解毒剤として使われた?ユニコーンの角
ユニコーンについて最も古く記されているのが、紀元前398年、ペルシャ王宮かかりつけの医者、ギリシャ人医師「クテシアス」が、ギリシャに帰国した時に書き上げた「ペルシャ史」です。
そこには、「インドには身体が白く、青色の目をして、額に一本の角が生えた、馬やロバに似た生物がいる。極めて俊足である。」と記されていました。
また、「角を削って出来た粉は、毒物を防ぐのに用いられる」と、これから始まるユニコーンの伝説として語られる角の解毒効果のことも言っています。
こうした迷信の発信源は、権力争いが激しっかたアジアの宮廷であったとされていて、多くの研究者は「我が身を守ろうと、偽りの効能を信じたために広まった」と指摘しています。
ユニコーンの角の効果のことは、クテシアスの時代からルネッサンス期に至るまで語り継がれ、たとえば、ブルゴーニュ公のシャルル豪胆公は、角でできた食器を使っていたとされています。当然のことですが、これはユニコーンの角ではなく、多くが実在する海獣イッカクの角でした。
クテシアスの真実
こうしてユニコーンを地中海世界に紹介したクテシアスだけど、実はインドを訪れたことがなく、ユニコーンのことは伝聞を記したにすぎません。
実際に見聞きしたのは、約1世紀後にシリア王国の外交使節としてインドを支配するマウリヤ朝の首都パータリプトラにとどまったギリシャ人。メガステネスでした。
彼は、著書「インド誌」でユニコーンを「カルタゾーン」という名前で紹介していますが、豚のような尻尾を持っていて、足首も太く短いことから、「カルタゾーンはサイである」と指摘する研究者もいます。
また、メガステネスはカルタゾーンについて、「単独行動を好むが、非常に温和で、争いを起こすことはない」とも伝えています。
これは、当時カルタゾーンが「インドにおいて、柔和さを体現している生物と位置づけられた背景に、宗教的な意味合いがある」と指摘されているといわれていて、この一角獣は仏教的寂静感の象徴として語っているみたいです。
そして、この「寂静感」は、瞑想や祈りと結びつけられ、聖獣として地中海世界でも受け入れていくようになりました。
イッカク(イッカククジラ)
北極圏に生息するクジラの仲間。体長は4M前後で、角のように見えるのは牙で、3Mにも達します。
牙がユニコーンの角として売買されていたので、乱獲によって数が減っており、現在の生息数は5万頭前後といわれています。
悪魔と動物の王
その後ユニコーンは、「幻想的で非キリスト教的動物」として排除される存在となりました。その理由は、エジプトの王プトマイオス2世が行なわせた「旧約聖書」のギリシャ語訳に隠されています。
紀元前3世紀、プレマイオス2世は、アレクサンドリアに72名のユダヤ人学者を集めて、「旧約聖書」のギリシャ語訳をするよう命じたけど、その際に誤訳が生じ、ユニコーンが排除すべき存在として紛れ込んだのでした。
当時の翻訳では、「われを獅子の口、また野牛の角より救い出したまえ」など、現行訳では「野牛」となっている部分を、すべて「一角獣」と訳されました。
これは、「獅子の口」と同じくらい恐ろしい悪魔的な動物として、「野牛ではいかにも小さすぎる感がある、力や大きさにふくらみを持たせるためにはどうしても想像力が必要だが、謎めいた伝説的動物ユニコーンのほうがおもしろい。」と訳者たちが判断したとされていて、そこでクテシアスらの著書にあったユニコーンを登場させたのではないかと考えられています。
インドから東のユニコーン
一方、インドから東へのユニコーンの伝播ははっきりしていません。
というのも、中国に伝わるユニコーンらしき聖獣にかかわる記録は、数千年前までさかのぼることができ、インドのモヘンジョ・ダロから出土した一角獣が彫られた印形などと比べても、どっちにルーツがあるのか不明だからです。
この中国版ユニコーンとされるのが、鹿の体と馬の蹄、牛の尻尾、そして角を持つ麒麟です。
「麒麟は動物の王であり、完全なる善性をもち、歩行の際、生命ある動植物を踏みにじらぬよう用心する」と伝えられていて、これはカルタゾーンの柔和さに似ています。
ユニコーンに似たこの幻獣は日本にも伝わりました。
伝来時期は仏教伝来と重なると推測され、福岡県朝倉市の廃寺跡から出土した土器片には、角を持つ麒麟がはっきりと描かれています。
さまざまな解釈を持つ一角獣
さっきのギリシャ語訳「旧約聖書」の中では、忌み嫌われる悪魔として描かれたユニコーンだけど、時代が下がるにつれて、そのイメージは変容を遂げていきます。
ユニコーンの変化
2世紀前半にアレクサンドリアで成立したといわれる自然科学書「フィシオログス」では、ユニコーンを「勇猛で漁師もこれに近づくことはできない。だが唯一、無垢な処女が近づけば、一角獣はその膝に座り込む。処女は一角獣を王にもたらし、獣はわれらがキリストの姿に移る。そして、永遠に処女なるマリアの体に入る。」と記しています。
宗教的意義と結びつきながら、扉の物語のような、処女によるユニコーンの捕獲という伝説も生まれたのです。
もちろんこの伝説は、「旧約聖書」などに記されていませんが、「獣はわれらがキリストの姿に移る。そして永遠に処女なるマリアの体に入る」という、キリスト誕生を比喩的に説明したような記述は、神学上の重要な構成となっていきました。
中世以降
中世になると、古代イスラエルの宗教詩を収録した「詩篇」にユニコーンをともなう聖処女が登場し、また、ギリシャ北部のアトス修道院に所蔵される「パントクラートア詩篇」にもユニコーンに乳を与える聖母マリアの姿が描かれています。
中世キリスト教社会では、ユニコーンは明らかにキリストを象徴するものだったのです。
さらに、「一角獣の角の形態と処女ないしマリアの至純が、これらの動物譚の筆者たちを挑発して、エロティシズムの強調に傾くのは当然」と指摘されているとおり、「フィシオログス」のユニコーンを参考にして書かれた多くの動物譚では、ユニコーンの角が、マリア(あるいは処女の乙女)の体に沈み込む男性器のシンボルとして描かれるようになりました。
そして「一角獣が処女マリアの息子であるキリストを表すことから、一角獣は貞節の象徴」であるとともに、その角は「男性的力のはっきりした象徴」という二面性を持つようになったのです。
また、「処女はユニコーンを引き寄せ、膝で眠り込ませるが、処女でないことを知られてしまうと、逆に角で突き刺される」という伝承のバリエーションも、「角の体内への挿入」という性的なイメージへの変容として付加されたものと考えられています。
一角獣とは
このようにユニコーン像を見てみると、時代や地域、宗教観によって様々に解釈されていて、ひとつの方向性をもってユニコーンの解釈を追い求めるのは困難であることがわかります。
聖なる獣としても、悪魔の化身としても描かれているユニコーンは、他の追随を許さないほどの多様性をもった幻獣なのです。
まとめ
ユニコーンほんとに存在はしないのかな?してほしい幻獣ですね。
ハリーポッターでは、「ユニコーンの生き血をすすると命が延びる」ともいいますね。
ペガサスとユニコーンの違いはあるんでしょうか?羽が生えているのはペガサス、ないのがユニコーン。そんなイメージですよねー。今度調べてみます。
また、もののけ姫にでてくる鹿もユニコーンの一種なんでしょうか?
というか何千年後、時が経つと、ポケモンも伝説の幻獣扱いされそうな感じもしますね♪笑
一角獣。宗教画などではよく登場したりするので、見かけたらこのことを思い出しながら、絵を鑑賞してみてください♪
<参考文献>
・「一角獣」リュディガー・ロベルト・ベーア、河出書房新社
・「一角獣・不死鳥・魔女」船戸英夫、弓書房
・「一角獣の変容」杉橋陽一、朝日出版社
長い文を読んでいただきありがとうございます。
世界のミステリーや魅力的に感じた事など、いろいろ書いていきますので、気に入っていただけたら幸いです。
これからも、よろしくお願いします。